スピーカー:松尾 泰 (東大理) 

タイトル:共形場理論・弦理論の双対性と可解模型

アブストラクト:
弦理論が量子異常や発散を含まぬ量子重力の候補として確立したのは80年代で
あった。その際、弦理論の基本的な対称性として確立したのが2次元共形対称性
である(ヴィラソロ代数とも呼ばれる)。2次元共形対称性は物理数学や流体力学
などで登場する等角写像全体がなす群であり、無限次元であることもあって、
低次元系であれば系の性質を完全に決定する強力な解析手法であり、数学と物理
の境界領域として多くの研究がなされた。
90年代になると、弦理論にブレーンなど高次元に広がった膜が存在し、ある種の
双対性を持つことが認識されるようになってきた。双対性とは、我々が良く知る例
でいうとハイゼンベルグの不確定原理における座標と運動量の関係や、電磁気学に
おける電場と磁場の対称性などが、良く知られる例である。このような対称性はある
意味で素粒子とソリトンがある意味で同一視可能であることを意味し、ここ20年
近く弦理論の主要な研究テーマとなってきた。
2010年ころになると、双対性についてより精密な対応関係が知られてくるように
なってきた。特にブレーン上で定義された4次元ゲージ理論の一部の物理量について
は、理論的に完全に導くことが可能であり、それが共形場理論で導かれる相関関数と
一致することが予想された。この理論的な「現象」を理解するうえで本質的であった
のが可解模型の手法であった。可解模型とは例えば2次元イシング模型のように分配
関数や相関関数が完全に解ける物理系であり、100年近く深化され続け多くの手法
が開発されている分野である。Bethe仮説、Yang-Baxter方程式、q-変形代数などが
その例である。このコロキウムでは、ゲージ理論や弦理論の解析において可解系の
手法がどのように発展し本質的な手法として応用されていったかとについて歴史的
な発展も交えて解説したいと考えている。