スピーカー:衣川 智弥 (信大工学部)

タイトル:宇宙初期天体からの重力波及び連星進化の可能性

アブストラクト:
LIGO,Virgo,KAGRAによる重力波観測により、多数の重力波イベントが観測されている。
今はまさに重力波天文学の黎明期に位置している。重力波観測のメインターゲットは
コンパクト連星の合体である。コンパクト連星とは、星が寿命を終え超新星爆発や
重力崩壊を起こしてできるコンパクト星(ブラックホール、中性子星)同士の連星で
ある。コンパクト連星は重力波放出により軌道が縮まり、いずれ合体する。重力波に
よるエネルギー放出は弱いため、合体までのタイムスケールは数億年から宇宙年齢
以上と非常に長い。したがって、宇宙初期にできたコンパクト連星でも現在で合体
するものがあるはずである。そこで我々は宇宙最初の星である初代星に注目し、
重力波源として研究を行ってきた。その結果、初代星起源の連星は典型的に約30太陽
質量程度の連星ブラックホールになることを2014年に示した。一方で従来観測されて
きたX線連星内にあるブラックホール候補天体は10太陽質量程度であり、そのような
重いブラックホールはほとんど存在しないだろうと思われていた。しかし、LIGOに
よる重力波の初検出はまさに約30太陽質量の重い連星ブラックホールの合体による
ものであった。これにより、宇宙には従来考えられていなかった重い連星ブラック
ホールが多く存在することが示唆されており、それらは宇宙初期にできたものかも
しれない。本セミナーでは初代星の連星進化の概要とその計算手法について述べる。
また、連星ブラックホール以外での初代星連星の観測可能性や低金属量連星の進化
及び光学観測での可能性等についても時間の許す限り議論する。