スピーカー:矢野 一義 (名古屋大M2)

タイトル:Fluctuation in the Fidelity of Information Recovery from Hawking Radiation

アブストラクト:
ブラックホールはHawking輻射と呼ばれる熱的な放射によりエネルギーを失い、最終
的には蒸発してしまうことが知られている。このHawking輻射に対してエンタングル
メントエントロピーと呼ばれる量を計算すると、量子力学から期待されるユニタリ
な時間発展とブラックホールエントロピーの大きさ程度の矛盾が得られてしまい、
量子論と一般相対性理論の間の整合性に大きな問題があることが知られていた。
これはブラックホールの情報喪失問題として盛んに研究されている。近年では、
Hawkingの計算では見落とされていた新たな鞍点の寄与を考慮することによって、
ユニタリティに矛盾しないエントロピーの振る舞いが得られることが示されている
ほか、ブラックホール内部の情報の復元に関してもその方法が知られている。
一方で、重力の経路積分はある種のアンサンブル平均として解釈されることが知ら
れており、それにより重力の経路積分で求めた諸量が典型的な振る舞いをしているか
という問題が生じる。先行研究によって、エンタングルメントエントロピーに関して
その揺らぎを計算することで、その振る舞いが典型的であることが示された。
本研究では、情報の復元度合いとして用いられるfidelityと呼ばれる量に関して、
その揺らぎを経路積分を用いて評価した。その結果、揺らぎは十分小さく、情報の
復元はアンサンブルとして普遍的であることが示された。